スキーで海馬が・随感【 山本瓔子・詩のギャラリー公式サイト】


スキーで海馬が 2005/11/2

スキーにのめり込んでいったのは、息子が小学3年頃だったと思
う。
年齢的に遅い滑り出しで、親子3人が同時にスタートした。

越後湯沢の舞子後楽園スキー場は、初心者にもってこいの平坦な広々としたところで、立つこともままならぬ私にとっては、実に安心な場所だった。
転ぶことがまた、楽しくて、雪まみれになってはしゃいだ。

スタートにふさわしい場所に恵まれて、次の週も宿を予約して帰るほど夢中になった。
それなりに次第に上達もしたし、場所もあちこち変えて、旅行も楽しんだ。

妙高、赤倉、猪苗代、八方尾根、奥只見、白馬、菅平、アサマ2
000、丸沼高原、川場、苗場、中里、かぐら・みつまた、石打
丸山、GALA、神立、加山キャプテンコースト、ルーデンス、
上越国際、谷川岳天神平などなど・・・

5月になると、それまで閉ざされていた奥只見スキー場がオープンする。豪雪地帯でそのころやっとスキーヤーが入れるのだ。

その大型連休に車の背にスキー板を積んで、高速を走っていると、スキーを全くしない人たちだろう、観光バスの窓から見下ろして、「あれ見てよ!可笑しいじゃん!」と明らかに軽蔑の眼差しで指さす連中がいて、こっちは内心ニタニタして自己満足に浸っていた。

冬が待ち遠しくなったのは事実で、それまで寒いだけの冬が、輝
いて見えた。風邪ッ引きがスキーに行って治ってきたというのも
あの適度な運動量と心地よい発汗に起因するものと頷ける。

挙げ句の果てに、わが家は当時はやっていたリゾートマンション
なるものを購入してしまった。越後湯沢の岩原である。そこを拠
点にして、あちこちに点在するスキー場へ出掛けた。
岩原は片斜面で、滑りにくいと言う人もいたが、ゴンドラやリフ
トを乗り継いで山頂まで行くと、下りは4キロのゲレンデをノン
ストップで降りられるのが、何とも爽快だ。

結構年配の人が、ゆったりとしたペースで滑っていて、年を重ねてもあんな風に優雅に滑ったらいいなあと、羨ましく眺めた。

夢は北海道、カナダ、スイス行きである。

時間に余裕が無いときは、ぐっと近場、日帰りできる富士天神山スキー場に赴いた。
その富士天神山でのある一日、こちらは快調に滑っていた。と、後方からスピードに収拾がつかなくなった人が、あっという間に近づいて、制御の効かなくなったまま、私に激突してきた。身をかわす暇もなかった。

どこをどう打ったか判らないまま、その場は何とか立ち上がり、再
び滑りはじめたのだが・・・・

昔、叔父に従弟妹たちとスキーに連れていってもらったことがあっ
た。飛騨高山だったが、そこで尾てい骨をしこたま打って泣くに泣
けない痛みを味わった。帰宅しても連日痛みに耐えて過ごした。特に就寝、起床の動作はつらかった。

赤本という、昔、家庭に常備してあった医学書を、こっそり開いて
骨折、ひび、と言う箇所を調べた。医者に行くには、恥ずかしすぎ
る。そこで打撲なら1週間位でなおる。ひび骨折なら1ヶ月以上、
1ヶ月半位かかると学んだ。

試しに1週間を過ごした。痛みは全くとれない。はあ、こりゃ打撲
じゃなかった。という具合で20日25日と過ぎ、痛みは薄紙を剥
ぐように徐々に薄らいでいった。完全に忘れることが出来たのは、やはり1ヶ月を過ぎてからだった。
やっぱり尾てい骨に、ひび割れが出来ていたんだと、妙に納得したものである。

富士天神山スキー場で、人と激突してから、微妙な変化に自分だけは気づいていた。

咄嗟に思い出せない言葉とか、頭では解っているのに口をついて出て来ない言葉がある。
言おうと思っても、頭の中を必死で整理して、思い出せる直近で最速の言葉に置き換えてからでないと、口を開けない。
今までの機関銃のような瞬間的な思考、反射的な会話が出来なくなった。

単なる老化現象と人は言うかも知れない。現に周辺の他人は誰も気が付かない。家族に話しても、年のせいだと一笑に付す。激突して以来だとは、信じない。

軽い脳震盪が確かにあの時起きていた。脳に損傷は無かったが、健忘という後遺症は残った。
大脳皮質の言語中枢は、左大脳半球の表面に近いところにあるそうだ。
話す中枢は前頭葉に
聞く中枢は側頭葉に
読み書きの中枢は頭頂葉にあるという。
してみると私の場合前頭葉に微妙なダメージが残ったとは、考えられないか。
意識は正常。言葉が出ない。人の言うことは理解できる。これを運動失語症というらしい。そこまで重傷では無いにしても、これでは政治家にはなれないナと、少し淋しい。

幸い文筆業には影響ない。要は考えること、書くことができればいいのであって、ぺらぺら立て板に水でしゃべらなくても、控えめにほほえんでいればいいのである。

確かにあの時以来、私はバカになった。

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